【読書びとサロン】vol.13 リスクの根源をたどる-天才たちが挑んできた“運命論”からの脱却ドラマ 「リスク 神々への反逆」②


自動運転も基本は正規分布


リスク(risk)の語源は、ラテン語のrisicareで、「岩礁の間を航行する」というような意味。

そして、これがイタリア語では「勇気をもって試みる」という意味となるそうです(諸説あり)。


本書のテーマは、人類が『どのように“リスク”を発見し』、『それをマネジメントする方法を考え出し』、『今日のような自由主義経済を発展させてきたか』、というものです。


人類は狩猟や農業を中心とした長い歴史の中では、自然の恵みや驚異とともにありました。

そこでの未来は、神のみぞ知る“運命”であり、未来をコントロールするという概念は無かったわけです。

やがて、遊びや賭けの中で勝つことを考えるようになり、大航海時代の一世一代の賭けと投資、そのような社会の中で天才的な数学者たちが確率をはじき出す方法を考え出していきます。

ここに確率論やリスク・マネジメントという概念が生まれてきたのです。


多変量解析や正規分布といった、現代のリスク・マネジメントで必要なものは、ほとんどが17~18世紀の数学者によって考えられています。


この彼らの発見が礎となり、現在のような時価総額1京円超の株式市場が存在し、ロケットを飛ばしたり、橋やトンネルを作ったり、画期的な医薬品の開発、保険などの金融商品もできてきたわけです。

将来有望とされる自動運転も基本的な理論は正規分布を使った位置測定なのですよね。


アポロ計画のロケットを開発した科学者の言葉に次のようなものがあります。

「漏れのないバルブを開発しようとしてどうしてもできない場合、それがどの程度の漏れなら許容できるかを決定しなければならない。」


リスクを取らなければイノベーションは起こり得ず、そのリスクや影響の度合いを測定できなければ、それを「やる orやめる」かの判断もできないのです。


本書の後半には、様々なファイナンス理論やモデルの誕生が描かれています。

ハリー・マーコビッツによる『モダン・ポートフォリオ理論』、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴァスキーによる『行動ファイナンス理論』や、フィッシャー・ブラックやマイロン・ショールズ、ロバート・マートンによる『オプション・モデル』等です。


各々の理論の登場に、難解そうなイメージもあるかもしれません。

しかし、そこがバーンスタイン氏。“そもそも”の理論の誕生を解説していますから、むしろ理解が深まるのではないでしょうか。


そして、本書と対でおすすめしたいのが【読書びとサロン】vol.5で少し紹介したタレブ氏の「ブラック・スワン」です。 

ここには、正規分布を前提としたリスク分析や確率計算では説明できない事象が起こってしまうことが述べられています。

併せたチェーン読書で思考が拡がるのではないでしょうか。


「リスク」の歴史を追うことは、「リスク」の本質を知ることかもしれません。本書はその点においても名著だと思います。

読書人:花村 泰廣

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