タイトル:佐藤可士和の超整理術
著者:佐藤 可士和
出版社:日本経済新聞出版社
本書は、知る人ぞ知る著名アートディレクター佐藤可士和氏による初の書下ろし本です。
この本が出版されたのは2007年。
その後、同氏の本は何冊も出ています。
さすがに時代をときめくアートディレクターですね。
初本に感銘した私はほとんど読んでみました。
その上で、やはり本書が私にとってのNo1。
ということでご紹介します。
(ちなみに、TOPの画像は、上が日本Ver.、下のカラー入りが台湾Ver.です。台湾でも注目されているようです。)
“超整理術” というタイトルなので、断捨離の本という印象を持たれたるかもしれませんが、私はマーケティング関連の本として常に座右に置いています。
仕事に行き詰ったとき、なかなか良いアイディアが浮かばなかったとき、何かヒントがないかと思ってこの本を手に取ります。
大切だと思う箇所にはマーカーを引きながら読んでいくのですが、毎回違う箇所が気になり、いつの間にかマーカーだらけになっています。
その中でも特に気に入っているフレーズを一つ紹介しましょう。
『僕は、企業のブランディングに携わることが多いのですが、大切なのは “相手の心の中に、ブランドイメージを建築する” ことだと考えています。つまり、ブランド名を聞いただけで、立体的かつ複合的なイメージ像を浮かび上がらせるということです。』
今からちょうど2年前、私が勤めている会社で、ある新しいプロジェクトが立ち上がりました。
それは、①これから資産形成をしていく若い世代に提供する、②低コストのインデックスファンド(株価指数などに連動する投資信託)、のプロデュースです。
‘若い世代(投資への興味が少ない対象=新たな層)’、、、。
‘インデックスファンド(市場に多々存在する=特徴が出しにくい商品)’、、、。
そのとき私は、印象的なファンドのネーミング、そして何よりシンボルマークが絶対に必要だと考えました。
なぜなら、投資信託というのは金融サービスを商品化したものであり、影も形もありません。
手に触ることもできなければ、味も匂いもありません。
特にインデックスファンドの場合だと、連動させる指数が同じであれば、他社の商品との差別化はほぼ不可能です。
それでも投資家の方々に選んでいただかなくてはなりませんから、いかに覚えてもらうかが勝負となります。
どうしてもインパクトのあるネーミングとシンボルマークが必要なのです。
そうして生まれたのが「たわらノーロード」 という投資信託なのですね。
この時に「訴求力」という課題を瞬時に直感できたのも、細かな商品設計にいたる思考にも、本書の様々な示唆があったからだと思います。
「仕事も頭もスカッと爽快」
本の帯にあるキャッチコピーの通り、マーケティング関連だけでなく、まさに様々な視点で ‘超’ 整理される快感も本書の魅力です。
実際に、佐藤氏は超どころではない整理人。
そのオフィスも、装飾は何もないほど実に整然としている(驚きます)。
超集中力のつくり方といえるのかもしれません。
自身の持ち物でも、財布さえ削ぎ落とす徹底ぶりです。
そのあたりは、「SWITCHインタビュー 達人達 小山薫堂×佐藤可士和」に詳しくあり、仕事や生き様のエッセンスが感じられ、こちらも実に面白いです。
両氏ともトップクリエイターでありながら、一方は ‘無駄を楽しむ男’ 、一方は真逆の ‘整理する男’。
対談の中で、この対比、そして共通項が描き出されていきます。
さて、皆さんはどちら派でしょう。
秋の夜長、クリエイターの頭の中を覗き込んで、いつもと違う思索をするのはいかがでしょう。
翌朝には違う何かが生まれているかもしれませんね。
読書人:花村 泰廣
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