タイトル:反脆弱性 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方(上・下)
著者:ナシーム・ニコラス・タレブ、訳者:望月衛(監訳)、千葉敏生(訳)
出版社:ダイヤモンド社
本書は、世界的なベストセラー続出しているナシーム・ニコラス・タレブ氏の最新作です。
「まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」や「ブラック・スワン-不確実性とリスクの本質」を読まれた方も多いのではないでしょうか。
20年以上にわたってヘッジファンドなどでトレーダーとして生き抜いてきたタレブ氏です。
どの著作も着眼点の鋭さ、ユニークさが素晴らしいと思います。
私たちは、黒い白鳥(ありえないことの例え)の発生を予測することはできません。
そうした “ありえない” といわれることが起こる世界で生き延びるための解を、“反脆弱性” としてリリースしたのが本書です。
この反脆弱性という考え方はとてもユニークです。
脆弱とは、何かのショックが加えられると壊れてしまうことです。
一般的に、その反対はショックがあっても壊れないように強くすること、つまり頑健・強靭であると考えられており、実際に我々人類は‘より頑健に’‘より強靭に’と歩んできました。
しかし、現代のような複雑な社会においては、頑健にすることを目的とした大型化や、システムの複雑化が、その頑健さゆえに一度(ひとたび)ショックが起きた時の被害をより甚大なものにしてしまっているのです。
逆説的ですが、現代社会は人為的に頑健にしようとしてきたため、そこにひずみが蓄積され、皮肉にも社会全体の脆弱性=もろさ を高めているのです。
歴史の中で幾度も起こっている災害や非常事態、‘ありえないような事’が、我々社会のもろさを露呈しています。
世界中を震撼させた9.11。
続く2008年のリーマンショックでは、当の金融機関ばかりでなく、グローバル化したあらゆる企業に大打撃を与えました。
また、我々日本に莫大な爪痕を残した東日本大震災。
その激震は、被災地をはるかにした世界中の産業界をも揺るがしました。
サプライチェーンの寸断による生産ストップばかりでなく、一国のエネルギー政策転換を成させるほどにです。
グローバル化は進むでしょう。そして、‘ありえないような事’はこれからも起こります。
だからこそ、脆弱を克服するためには、頑健にするのではなく、『反脆弱』にしなければならないのです。
では、私たちは反脆弱性をどのように生かしていけばよいのでしょうか?
タレブ氏は、「ダウンサイドを抑えつつ、アップサイドを極大化するオプションを選択すればよい」と言います。
すべての資産を中程度のリスクにさらすのではなく、安全な資産と積極的にリスクを取る資産に分けることで、何が起こっても再起不能にならないようにするというのです。
例えば、阪神淡路大震災の時には住宅が壊れたり、焼失したりして、住宅ローンだけが残って自己破産してしまった方がいらっしゃいます。
また、住宅を担保に銀行から借り入れを行って事業を始めたものの、バブル崩壊の煽りを受けて事業が立ち行かなった方もいます。
ショックが起こることは予測できませんが、ショックが起きた場合でもリスクをコントロールできるようにしておかなければなりません。
繰り返しますが、私たちは“ブラック・スワン”を予測することは絶対にできません。
不確実な世界を生き抜くためにも、しなやかな生き方をめざそうではありませんか。
読書人:花村 泰廣
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