タイトル:ハーバード流ボス養成講座 優れたリーダーの3要素
著者:リンダ・A・ヒル ケント・ラインバック
訳者:有賀裕子
出版社:日本経済新聞出版社
数多あるリーダーシップ本の中で「5冊を」と言われたら、必ず挙げるお薦めの一冊です。
(あとの4冊は末尾で紹介します)
優れたマネージャーの仕事術ともいえる本書ですが、マネジャーになるとは「自己変革を要求される“人生の一大転換点”だ」といっています。
そんなに大げさなものか!?と思われるかもしれませんが、私の実感としても “かなり的を射ているな” と思っています。
というのも、そのくらい大きな “一大転換点” と捉えるかどうかで、次のシーンが変わってくるからです。
本分から引用しましょう。
「どうしてこんな人がマネジャーになれたのかと、首をひねるほどひどい上司に出会ったのではないだろうか」。
私の経験では残念ながら一人や二人ではありません。
その人たちは有能でバリバリ仕事をこなし、上司の目に留まったからこそマネジャーになれたはずです(=仕事の能力は高い)。
なのに、なぜ、その人たちはマネジャーになった途端、部下からそのように思われてしまうのでしょうか。
本書は、その ‘なぜ’ を解き明かし、‘一大転換点’ に必要なノウハウがびっしりと詰まっているのです。
その中で、私が最も重要視しているのは「権限委譲」です。
部下に権限を委譲するということは、勇気そして時として忍耐も要することです。
ここに ‘自己ではない他者’ との関係、つまりマネジメントの在りようが凝縮的に問われているように思うのです。
では、本書とともに、勇気と忍耐の局面(ステップ)に身を置いてみましょうか。
まず、①「委譲する権限の範囲をはっきりと決める」。
部下の実力を見極めて範囲を設定し、それをきちんと理解させなければなりません。
この範囲決めはとても大切です。
委譲範囲が狭すぎれば部下自身の考える機会を奪い、逆に広すぎれば過剰な権限にアップアップし苦悩を強いることとなります。
他者が持てる適切な範囲を判断する。
早々から大きな勇気と責任が伴うのですね。
次に、②「委譲したら任せきる」。
絶対に口を挟まないことです。逐次報告を求めることもしてはいけません。
定期的に進捗を確認する程度で良いのです。
自分の頭で考えさせ、やらせてみて、上手くいかなければ何度でもやらせ、上手くいったら褒める。
まさに子育ての如しです。
他者がやり切れるよう、マネージャーとしての自己をやり切る。
忍耐と、自己他者共の時間との戦いも出現してきますね。
そして、③「責任をすべて自分が引き受ける覚悟を持つ」。
間違えても、部下のミスを責めるようなことがあってはなりません。
腹を決めて他者(の行いの結果)を引き受ける。ここに己の胆力が試される。
しかし、(やはり?、)これが最も難しいわけです。
マネージャーとは、かくのごとく自己の内に他者を包み込むようなものではないでしょうか。
であるから難しく、また単に地位・ポジションという以前に、人間として大きな意味を問うことになるのではないかと思います。
これからマネージャーになる方も、現にマネージャーの方も、「優れたマネージャーの仕事術」を通し、様々に自己を確認してみてはいかがでしょうか。
最後に、PC(ポリティカル・コレクトネス)の話題とともに賑わったここ数日より一言。
あらためて、『寛容』が豊かさのキーだろうと感じていますが、皆さんはいかがですか?
≪ちなみに、のリーダーシップ本4冊≫
・「リーダーシップ・チャレンジ」 ジェームズ・M・クーゼス
・「リーダーシップ論」 ジョン・P・コッター
・「EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方」 ダニエル・ゴールマン
・「ビジョナリー・カンパニー2 - 飛躍の法則」 ジェームズ・C・コリンズ
≪ちなみに、の付け足し TED Talk≫
リンダ・A・ヒル「集団の創造性をマネジメントする」
①日本語字幕付き
②字幕なし
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