タイトル:敗者のゲーム
著者:チャールズ・エリス
訳者:鹿毛雄二
出版社:日本経済新聞出版社
皆さんの人生設計で大切なお金にまつわる制度において、2017年と2018年に大幅な税制改正がありました。
2017年には「個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)」が導入され、20歳以上のほぼすべての人が確定拠出年金制度を利用することが可能となりました。
また、2018年は、積立投資を行って得られた利益がすべて非課税になるという「つみたてNISA(ニーサ)」がスタートしました。
こうしたタイミングでご紹介したいのが、1985年の初版以来、新版が出るたびに私が購入している「敗者のゲーム」です。
本書は初版時から既に‘運用哲学の古典’とされ、30年以上にわたり、版を重ねながら読み継がれてきました。
その時々の装丁に時代が反映されていますので、をちょっとご紹介します。
↓1999年版、副題が「なぜ資産運用に勝てないのか」
↓2003年版、副題は同じ
↓2011年版、原著第5版、副題「金融危機を超えて」
現在は冒頭の第6版、最もシンプルになりました。
デザインの変遷も一興ですね。
さて、 著者のチャールズ・エリス氏は証券会社を経た後、グリニッジ・アソシエイツ社を設立して金融機関に対するコンサルティングを行う傍ら、エール大学財団基金投資委員会委員長や米国公認証券アナリスト協会会長などを歴任された米国金融業界の重鎮です。
先ほどのiDeCoとつみたてNISAでは、日経平均株価などの株価指数(インデックス)に連動する投資信託(ファンド)に積立投資ができる仕組みになっています。
インデックスファンドの特徴として、商品性が分かりやすく、アクティブファンド(インデックスを上回ることをめざすもの)よりも手数料が安いことから、一般的に長期投資に向いていると言われています。
エリス氏は、早くからインデックス運用がアクティブ運用よりも優れている点を見抜き論文を発表していました。
その理論に共感した運用会社がインデックスファンドの運用を始めたのが1970年代。
そして、今日では数百兆円のお金がインデックス運用されるまでになっています。
この本は“敗者のゲーム”という一見投資に似つかわしくないタイトルですが、これは「投資=敗者のゲーム」であるという考え方からきています。
著者はテニスの試合に例えて次のように説明しています。
「プロは9割が勝ちにいってポイントを取っているが、アマチュアは勝利の9割が相手のミスによるものである。前者を勝者のゲーム、後者を敗者のゲームと呼ばれるそうですぶ」と。
投資の世界でも、資産運用ビジネスが成熟してきたことによって市場が効率的となったため、ミスをできるだけ減らすことが投資で勝つことにつながるようになってしまったといいます。
そして、そのミスを減らす運用こそがインデックス運用であるというのです。
私はアクティブ運用を否定するつもりはありませんし、実際に投資もしています。
しかし、投資を始めてみたいという方にはインデックスファンドから始めて頂きたいと考えていますし、インデックス運用についてもっと理解を深めたいと思う方には本書をおすすめしています。
読書人:花村 泰廣
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