【読書びとサロン】vol.17 心理学者が描き出すマネジメントの大書「完全なる経営」

タイトル:完全なる経営

著者:アブラハム・H・マズロー

監訳:金井壽宏

訳:大川修二

出版社:日本経済新聞出版社


時代を先取りしたマズローの先見


本書は、1962年に米国の心理学者であるマズロー氏が「いい会社」にフォーカスして書いた経営書です。


『リーダーになる』でおなじみのウォレン・ベニス氏が序文で書かれているように、本書出版の当時、第二次世界大戦後の繁栄に満足していたアメリカではほとんど注目されなかったそうです。

しかし、2000年代に入り再び注目され始めたのは、社会が複雑化し、企業の置かれている環境もグローバル化やテクノロジーの急激な進歩によって厳しさが増したためです。


マズローの「欲求階層説」はご存知でしょうか。

「自己実現の欲求」について書かれたビジネス書が氾濫していますので、お聞きになられた方も多いと思います(昨今では「承認欲求」というのもよく耳にします)。

ただ、本書が書かれた1960年代というと、キューバ危機やベトナム戦争が起こるなど東西冷戦が最も厳しい時代で、企業の多くは社員の生理的欲求や安全欲求のレベルを満たすことがやっとでした。

そうした中で、企業が成長するために、リーダーは社員の自己実現を達成する最高レベルの理想的組織を作らなければいけない、とマズローは見抜いていたのです。


 リーダーは社員の「自己実現の欲求」を満たさねばならない


優秀な人材がきちんとした組織に加われば、まず仕事が個人を成長させ、次に個人の成長が企業に繁栄をもたらし、さらに企業の繁栄が内部の人間を成長させます。

自己実現をもたらす仕事に取り組む場合、仕事の大義名分は自己の一部として取り込まれており、もはや世界と自己との区別は存在しなくなるからだというのです。


組織に課せられた最も重要な任務は、“社員の創造性を抑圧しないことだ” とも。

自己実現に向けて成長しようとする傾向が、ほとんどの人間に備わっていることは間違いないからです。


また、社員が自分の信念や価値観が仕事の中で活かされていると感じないかぎり、好業績チームは生まれません。

社員が会社のビジョンを理解することで、会社が何を目指しているのか、自分の部署がどの方向に進んでいるのか、最終的な目標を達成する上で、自分の仕事がどのように貢献しているのかが理解できるのです。


従業員満足度調査(ES調査)を行っている会社は多いと思います。

企業が成長の源泉としているのは、社員が持っている『活力』であり、「働きやすく、そして働きがいのある組織」は企業業績の向上には欠かせません。


最近では優秀な学生は大企業に就職せず、起業を目指すそうです。

大企業で自己実現するまでの時間は、変化が激しい現代のスピードに合っていないと考えているのでしょう。


マズローは50年以上も前にこうしたことを説いており、だからこそ本書は今も輝きを放っているのだと思います。

企業経営やリーダーシップについて、より深く考えてみようという方には、是非とも手に取って頂きたい一冊です。

読書人:花村 泰廣 

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