タイトル:決定力を鍛える チェス世界王者に学ぶ生き方の秘訣
著者:ガルリ・カスパロフ
訳:近藤隆文
出版社:NHK出版
「あなたの頭のなかはどうなっているのか?」から始まった
史上最強、あの稀代のチェス世界王者の「自己探求」
本書は、史上最強と謳われたチェスの元世界王者ガルリ・カスパロフ氏による名著です。
同氏は1996年に‘人類の知性’を代表し、IBMのスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」と対戦し話題となりました。
日本では、2014年に将棋の羽生氏とのスペシャルチェス対局が生中継され、天才vs天才の対局に湧いたことは記憶に新しいのではないでしょうか(ちなみに、羽生氏のチェスの腕前は日本ランキング1位、凄いですね)。
2005年に引退してからは政治家に転身し、ロシアの民主化を推進する政治家として活躍し、大統領選挙の候補者にも選出されています。
チェスの世界王者を15年間保持する中で(未だこの記録は破られていません)、幾多もの対戦、その経験を丁寧に読み解き、つかんだ “決定力” が惜しみなく語られています。
誰もが世界王者の頭の中、思考、人生を解明したいものです。
向けられた度重なる質問に、時をかけて十分に探求した一言一言が本書だといえましょう。
本書の原題は「HOW LIFE IMITATES CHESS」。
どのような局面においても、それに応じた柔軟な思考力や強靭な意志、過去の棋譜からの学びの姿勢が融合して同氏の人生哲学に昇華されています。
ビジネスにもスポーツにも、人生全てに送る “決定力” 指南
本書の中から、これはと思う箇所をいくつかご紹介しましょう。
情報革命による社会の高速・加速化を “快速チェス(全手終了までの持ち時間25分の超高速)”の対局を引用しながらこういっています。
『大きな成功をおさめている棋士は、読みの根拠をあくまで戦略プランに置く。ガイドとなる戦略があれば、最大の効果と最大の速度は相互に排他的にならず、双方を備えた分析が可能になる。』
戦略を持つことの重要性をとき、そして、ゴールと中間的な目標、そのための一つ一つの手を割り出ししているのだといっています。
『戦略家はまず遠い未来のゴールを設定し、そこから現在へと逆向きに考える。グランドマスターが最善の手をさせるのは、十手か二十手先の盤上に見たい展開を根拠にしているからだ。』
パブロ・ピカソの言「コンピューターは役に立たない。答えを教えてくれるだけだから」も用い、問うこと、そして‘正しい問い’を見つけることの重要性を何度もたたみかけています。
『長期的に見て危険なのは、悪い戦略がよい戦術やまったくの幸運のために成功するケースだ。一度はうまくいくとしても、二度起きることはめったにない。だからこそ、成功にも失敗と同様に厳しく問いを投げかけることが重要である。』
また、革新の章では、独創性・創造性・発想が不可欠だともいっています。
『眠っている才能と同じで、表現されない想像力は存在しないも同然だ。・・・(中略)・・・創造性は努力と目的意識を通じて手に入れる事が出来るのである。』
その他にも、『“なぜ?”が戦術家を戦略家にする』『集中時の直感は分析を超える』など、どれもが珠玉の言葉ばかりです。
私は勝負師、特に将棋の大山康晴名人や羽生善治竜王が書かれた本は好きでよく読みますが、本書も何度も読み返す価値のある一冊だと思います。
2018サッカーワールドカップを観戦しながら、“決定力”に思いを馳せるのもいいかもしれませんね。
読書人:花村 泰廣
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