タイトル:青雲の梯 老中と狂歌師
著者:高任 和夫
出版社:講談社
田沼本は数々あれど
本書は歴史小説。
(であるからか)タイトルのどこにも人物名はない。
老中と狂歌師、その組み合わせが面白そうで手に取ってみた。
物語は大田南畝(なんぽ、狂歌師)からはじまる。
老中の登場はしばらく後、将軍家治に召された田沼意次だ。
田沼意次と(ペアで)描かれるのは、だいたいが松平定信である(と思っている)。
この並びたてだと視点が固まってしまうんだよな、、、などと思っていた私には、本書の意外なペアリングは強烈に魅力的だ。【オススメポイント①】
読み進めると、田沼が主役なのがわかる。
が、そこに同程度に南畝を描きあわせることで、時代の空気感というか人の世の営みというか、見えてくる視野がガッと拡がり、どんどん立体的に立ち上ってくるのだ。【オススメポイント②】
そこには、企業小説を描き続けてきた高任氏ならではの面白味もある。
静々とした筆致、人物への光の当て方(露光量というか)も煽動的でなくて、平らかに “読書” を味わえる。【オススメポイント③】
同じ時代を、違う場所で生きた二人。それぞれのドラマの脇役も多色となり、語り、動きまわり、物語のスペースを広げていく。豪華なキャストである。【オススメポイント④】
田沼政策の結果を知る我々。後代からすると稀代の改革者であるが、「○○の改革」ともならず悪評の中に消されていった。
その “怖さ” がひたひたと迫り、ムムム、、と考えさせられる。ここには史実の記録ではない小説の醍醐味がある。【オススメポイント⑤】
「改革」って何だ?
はるか昔に教科書で習った頃から、私はなぜか田沼意次を嫌いでなかった。ダークなのに。
そして、大きな存在感で記憶されたのを覚えている。
むしろクリーンクリン(とされた)松平定信の方を、“何となく苦手だな~” “この人がお父ちゃんとか先生だったら嫌だな~” “なんか息苦しそう、、、” などと思っていたものだ。
「白河の清きに魚もすみかねて もとの濁りの田沼こひしき」
有名なこの歌のせいかもしれない。
洒落てるし、“よしっ!田沼いいぞ!!”と贔屓の挽回にガッツポーズな気分でお気に入りだった。
(って、これくらいしか狂歌を知らないのですが、、、^-^;)
(って、狂歌? 狂歌!)
老中と狂歌師。このペアリングが放つ、この物語の(作者の)キーはここか!
狂歌を起こし、一世を創りあげたのが南畝。
そして、失脚の後の世に読まれた(老中の)一つの狂歌。
松平定信が主導した「寛政の改革」は江戸の三大改革のひとつだ。
ということは、(今更ながらであるが)定信は改革者だったのか?
なにやらこっとりしない。ハラにズンとこない、いや、呑みこめない。
「焼きなおし」「踏襲」の文字が頭に居座ってしまう。
「改革って何なんだ?」
「改革者って何なんだ??」
改めて考えながら、目をあげると幼い私がガッツポーズしている(変わらないな~(笑))。
面白いです。
読書人:岡村 亜矢子
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