FROM桑名石取祭『NIN』vol.12 「祭車の灯り」


祭の夜、灯りをまとった祭車には昼にはない情緒的な表情がありますよね。

この夜を彩る灯り、実は時代とともに色々な光源や方法が出現してきました。


私が子供の頃(40年程前の話です)、祭車の灯りはすべて「蝋燭」だったのですが、いつの頃からか一部が「白熱球」にとって変わってゆきました。


春日町の祭車では、発電機から電源を取って白熱球を灯しています。

灯りの部分はこんな感じです。 

燭台は、電源を仕込んだプラグになっており、蝋燭の形を模した白熱球を差し込めば点灯。


下図は、春日町の祭車の図面に灯りを表示してみたものです。


は、山形十二張(12)+万灯(1)=13箇所 ここは「蝋燭」

は、祭車本体の燭台部分(先の写真、平面図の赤・緑部分)で、大小合わせ24箇所

は、天幕の提灯で、7箇所。*厳密には太鼓掛けにも数箇所あり。

②と③に「白熱球」を使っています。


44箇所+α、数えてみると意外と多いですね。

そんなですから、蝋燭のお守(交換等メンテナンス性、安全性、ランニングコストなど)や、その時代の格好よさなどの風潮等々、様々な理由で白熱球が採用されてきたのでしょうね。


さて、そんな灯りに再び変化の波が来ています。

“蝋燭から白熱球に変わった祭車の灯りは、これからどうなってゆくのか?”


それには大きな流れが2つあるようです。

【流れ1:LED採用による省電力化、バッテリー電源の採用】

【流れ2:原点回帰(蝋燭の使用)】


なぜか? 白熱球の使用に問題が生じてきているからです。

その問題とは、

(1)白熱球は消費電力も大きいため、発電機を用いていますが、この「発電機+白熱球」組み合わせでは、途中に給油をしないと一晩は燃料が持たないのです。

このため、長時間となる本楽では、予備のガソリンを持って移動をしなくてはならず、この事が安全性の問題から、消防や保存会より発電機使用の自粛が呼び掛けられているんです。


(2)温暖化防止、環境保護の観点から、白熱球の生産・販売の中止が世界的に拡がってきていますよね。今や光源のトレンドはLED。日本も例外ではないですね。


これらの問題を解消する流れが先の2つなんです。

LEDは省電力、バッテリーを組み合わせればガソリンの問題はなくなります。

最近では、蝋燭型で電池式の提灯用LED電球↓もあり、広く祭事に使われるようになってきているようです。 

これは単三電池2本で光ります。


もう一つに原点回帰、つまり蝋燭の使用があり、個人的にはこの原点回帰に心躍ります。

ただ、以前に比べて和蝋燭の値段が高騰しており、そこが一番の悩みどころです。


このような流れの中で、現状では発電機を使用している町は既に少数派となっており、春日町もどうするのか決断を迫られています。

(ここ何年かは、全てを蝋燭にした他の町の祭車をみて、“春日町も全部蝋燭にしたいね~”と話したりしていました。だって、やはり粋じゃないですか!)


今年の春日町はどうするか?

「叩出しと試楽は従来通り。本楽はNEWバージョン。」という2段構えで臨みます。 

本楽は、ほぼ和蝋燭でいきます!

実はこの2段構えにしたのは昨年から。

本楽の日、和蝋燭の灯る祭車を前にして、その美しさに見入ってしまいました。

厳かです。やかましい祭の中の “静謐”、とでもいいましょうか、放つ空気感が断然違いますね。


技術の進歩を取り入れながら、一方で古くからの方法に戻る。

こうして継承と洗練がつくられるのかな、などとちょっと感動しました。


さて、その和蝋燭は大小こんな感じです↓。 

大きな蝋燭は、高さ約32.5cm。これは祭車の前方の蝋燭台で2本使用します(図面赤色)。

小さな方は、サイドの亀腹や破魔(車輪のこと)に使います(図面緑色)。

この和蝋燭を使う時には、昔(蝋燭時代に)使っていた燭台の金具を再加工したもの付けます。


下の写真は、本楽の日に斎火を万灯に移す時のショットです。

これ結構大変なんですよ。

十二張の上の方もこんな感じで火を入れて行きます。

山形を曲げて、、、脚立で、、、という方法もあるけれど、この方が粋ですよね。


今年のお祭り、ぜひ祭車の灯りにも注目してみて下さい。

案内人:春日町副祭事長 堀田大介


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