今回から仲間が増え(三人連れ)になりました!(やっほーーい♬)
あちらにいる鬼(朝日新聞出版)
井上荒野
2019.2.7発売
作家井上光晴と妻、そして瀬戸内寂聴をモデルに、その“特別な”三角関係を描いた小説。
表紙は裸婦、タイトルには「鬼」。
図書館カウンターにあったこの本に目がいき、二度見すると、添書きで瀬戸内寂聴さんがご自身の「不倫」を告げていた。
書いたのは井上夫妻の実の娘である井上荒野さんである。
手に取り、裏を見れば、
不倫を書かれた寂聴さんが絶賛している。
小説とはいうものの、、、
(いやー、作家ってなんなの?!ものを創り出す人の精神って一般人(私)とは違うわ~)
と三度驚かされ、
(どう思って書いたのかしら、、、?)(どんな風に描かれてるの?)
沸々と興味が湧き起こり借りてみることに。
読んでみると、一人の男を愛した二人の女性・妻と愛人、物語はその二人の視点で書かれている。
著者の変な感情移入や喜怒哀楽は一切見えず、あくまでも作者として登場人物を描き切っていた。
いや、むしろ、登場人物が醸し出す静けさから立ちのぼるのは「シンパシー」と「リスペクト」である。
夫(白木篤郎)の多々ある女性関係を知りながらも、波風立てることなく平穏な家庭を愛しむ妻(笙子)、よくできてる。知的で文学にも深い造詣を持ちチャーミング。
愛人(みはる)も決して家庭を壊すわけではない。
愛憎や葛藤、いろいろな感情もあっただろうに、心の中に封印してたのだろうか。
笙子とみはるの関係が実によかった。
各々に抱える孤独、そして、“書く”ということへの思い、お互いがその理解者として在るのだ。
殊に篤郎の死後の二人は美しい。
(人間の心って、清とか濁とか、正しいとか間違いとか、普通とか普通じゃないとか、そんなのをどこか超越した計り知れない拡がりがあるんだろうな、、、。)
久しぶりにじっくり読んだ本です。
結局、タイトルの「鬼」は最後までわからなかった(篤郎を鬼としたようだけど、んん、私にはしっくりこない)。
このあたりや本作のことを著者が朝日の「好書好日」で語っているので興味があれば是非。
ともあれ、さすが直木賞作家。書くことを通して著者もまた超越している。
<追記>この著者の書いた「ひみつのカレーライス」って絵本、面白かったなあ。昔、小学校の読み聞かせで使ったんだけど、子供たちも大喜びで楽しんでたね。お子さんにいかが?きっと喜びますよ!
0コメント